コロナ社会を考える

日本にはなじまない私権制限 コロナ罰則は最後の手段

渡辺周・立憲民主党幹事長代行

 

渡辺周氏=須藤孝撮影

渡辺周氏=須藤孝撮影

政府は新型コロナウイルスによってどれだけの期間、どれだけの損失が出るかというシミュレーションが、最初からできていなかった。そのために緊急事態宣言の発令も結果的に小出しになってしまった。政府が事態を中長期的にどう見通しているかが国民に伝わってこない。「現在はこのような傾向だから、1カ月我慢してくれれば、このような水準になる」というような客観的な目標を示さないために、「出口の見えないトンネル」になっている。精神論だけでがんばれと言われても難しい。

科学的根拠も不十分だ。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で起きた集団感染から約1年になるが、あの時点から世界の感染状況を踏まえながら、予測データに基づいて対応すべきだった。医療現場の逼迫(ひっぱく)についても、データで示したうえで各都道府県の取り組みを支援すべきだ。私の地元の静岡県でも地域ごとに病床占有率の数字を分析することで、問題の深刻さがはっきり見えるようになった。

そのうえであらゆる政策、予算を総動員して、PCR検査を早期に進めるべきだった。「国内移動パスポート」のように、陰性証明をみなが持つようになれば、それを前提に移動が可能になる。昨年の国会の参考人質疑でも専門家から提案があったが、結局、具体化しなかった。PCR検査を早期に網羅的にできなかったことが対策の遅れにつながった最大の要因だ。また、東京オリンピック・パラリンピックの開催に与える影響を考慮したのかもしれないが、出入国の際の水際対策の厳格化も非常に遅れた。

国民の良識を信じる

休業要請に応じない事業者に対する罰則についてはできるだけ限定的で、最後の手段であるべきだ。大前提として、私権を制限しなければならないほど厳しい状況であるということを数値を示して説明し、この数値を下回れば解除するという目標を示し、そのうえで協力を求める。

悪質な場合には罰則も必要だが、お店にすれば死活問題であって、経済活動の自由も大切だ。駐車禁止違反のように、警察が見回りをして取り締まるようなことになれば、取り締まり国家になってしまう。…