日本と韓国はGSOMIA(軍事情報包括保護協定)という安全保障上の機密を共有できる協定を結んでいます。
韓国側が「自分達に非はない。動かぬ証拠がある」というのなら、この協定に基づいて、日本側に非公開で突きつければいいはず。
水平線の見えない写真がなぜ威嚇飛行の証拠になりうると思うのか?
日本に客観的・論理的に対抗できないのだから、もうあきらめてこぶしを降ろすべき。
韓国「低空威嚇飛行」証拠写真はダブルスタンダード
ここ数年、韓国で流行っている「ネロナンブル」という言葉がある。直訳すれば「私がやればロマンス、他人がやれば不倫」という意味。ダブルスタンダードを上手い表現で言い換えた造語だ。このネロナンブル、韓国紙の政治面で見かける事が増えている。
例えば、文在寅大統領が自分の考えに近いマスコミ出身者を大統領の広報担当に抜擢した際に、ネロナンブルが登場した。朴槿恵政権がマスコミ出身者を大統領府報道官に任命したときに、文大統領が代表を務めていた政党が「権力とマスコミの癒着だ」と批判したのに、自分が大統領になったら、同じ事を堂々とやったので、野党や保守系のメディアは「ネロナンブル」だと批判したのだ。
韓国では、こうしたネロナンブルが内政面だけでなく外交面でも起きているようだ。
韓国国防省は今月23日に海上自衛隊の哨戒機P-3Cが韓国海軍の駆逐艦に高度60~70メートル、距離540メートル「低空威嚇飛行した」と猛批判していて、24日に「証拠画像」を公開した。当初証拠動画を公開すると息巻いていたのだが、写真に変わったという事で拍子抜けしたが、その画像を見て驚いた。機体の大きさと水平線との距離を元に計算し、高度を割り出そうと資料を集めて準備していたのに、肝心の水平線がどこにも写っていないのだ。
「何だこれは?」と思いよく見ると、写真のうち2枚はいたるところに画像処理が施されたレーダーの画面で、そこに表示されている数値が高度60~70メートル、距離540メートルの証拠だというのだ。韓国軍関係者は「低空威嚇飛行を立証する証拠であり機械は嘘をつかない」と決定的な証拠であると強調し、韓国メディアは「日本は威嚇飛行の首根っこをつかまれた(左派系ハンギョレ新聞)」などと書き立てた。
しかし、思い出してもらいたい。つい3日前に日本が公開したレーダー照射問題の「音」について、韓国国防省は加工された音であることを強調し、「探知日時、方位角、電磁波の特性’などが全く確認出来ない、実態の分からない機械音」と全否定していたではないか。防衛機密が含まれる証拠を加工して公表した日本の対応を全否定しておきながら、自分たちは「公開すればレーダー体系が明らかになってしまう」という理由から、画面の大半が画像処理されたものを証拠として出してきたわけだ。まさにネロナンブル、ダブルスタンダードだ。
韓国側が公表した画像処理だらけのレーダー画面には日時や場所を示す数値が記載されていたが、日本の「音」を否定した際の韓国側の論理に従えば、その数値が加工されたものではなく、本当に日本の哨戒機にレーダー波を照射した時の物だと断言できないはずだ。だが、韓国側と同じ土俵で反論する必要はない。そもそも、見た人全てが客観的に低空飛行したかどうかが分かる、水平線が写った写真を公開していないのは不自然なのだ。その写真が防衛機密に当たるとは到底思えない。
防衛省は、反論しながらもこれ以上の反証は出さない方針で、これまで通り、哨戒活動を続けるという。一方韓国側は、日本の哨戒機が同様の飛行を続けるなら、「対応規則遵守により強力に対応していく」としている。韓国メディアによると、韓国軍の対応規則は、警告通信→火器管制レーダー照射→威嚇射撃という流れだ。
海上自衛隊による哨戒活動は365日1日も休むことなく続けられている。韓国側が本気で対応規則を遵守するというなら、日韓の防衛・軍事面での衝突はさらにエスカレートする可能性もある。
【執筆:FNNソウル支局長 渡邊康弘】