コラム
政界地獄耳
政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)
【政界地獄耳】JTのロシア関係強化は国益を損ねないのか
★参院の予算委員会に出席するため、外相がインドで開かれたG20外相会議を欠席したと国内のみならず、海外メディアでも大騒ぎになったが、国内世論や与野党議員、メディアはこれを「国益を損ねる」と合唱した。まさにその通りだが、自民党参院幹部は外務省のせいにして外交音痴を露呈させ、内外に改めて恥をさらした。ところがそれに勝るとも劣らぬ国益を損ねる事態が9日、衆院安全保障委員会で議論された。質問したのは立憲民主党の元防衛副大臣・渡辺周だ。
★ご存じの通りG7の一員である我が国は共同歩調を取りながらロシアの一方的なウクライナ侵攻に強く抗議、金融制裁、ロシアへの輸出入規制、最恵国待遇の取り消しなどを行っているが、EUや米国に比べれば少々甘い部分もある。そこで治外法権化しているのが18年、ロシア4位のたばこメーカー、ドンスコイ・タバックを買収するなど、ロシアとの関係を強化するJT(日本たばこ産業)だ。もっとも、同社は世界中のたばこ会社を買収し続け世界シェアを狙う。たばこ事業は中国、インドネシア、ロシアがマーケットとして大きく、昨年10月のJTの発表ではロシアのたばこ市場でのシェアは36・8%(22年1~9月期)で首位。ロシア事業について「国内外におけるあらゆる制裁措置を順守した上で、事業運営を継続している」と説明している。
★さて委員会では防衛相・浜田靖一、外相・林芳正に渡辺が問いただす。JTの筆頭株主は34%の株を持つ日本政府。民営化後も歴代幹部には財務省事務次官経験者が就く。経済制裁の中でJTはロシアでたばこの製造、販売を今も続けていて現地法人はロシアに毎年、国家歳入の1・4%に相当する3000億円以上の税金を納めていると指摘。国内では昨年末に防衛費捻出のためたばこ増税を決めながら、ロシア経済を支えている矛盾をただした。これこそ国益を損ねるのではないかと思うが両大臣ははっきりしない。メディアもほとんど取り上げない。国益とは何か。(K)※敬称略